SDS-PAGE用ポリアクリルアミドゲルの調製例をゲル濃度別にまとめています。アクリルアミド/ビス混合液は、アクリルアミドとビス比率が37.5:1もしくは29:1の混合液をご使用ください。 Show
分離ゲルの作製に必要な各試薬量
*TEMEDを加える前に、脱気を行われることを推奨します。 濃縮ゲルの作製に必要な各試薬量
Modified from Joseph and David. Cold Spring Harb Protoc; 2006. 本文中に出てくるマークの意味 :ご注意 / :プロトコールを変更できる箇所 / :詳しい情報 電気泳動とはウェスタンブロッティングのはじめのステップである電気泳動をご紹介します。大小さまざまなタンパク質が含まれるサンプルをサイズの違いに並べることで目的のタンパク質を見つけやすくなります。 電気泳動の原理タンパク質の電気泳動法としては下記3 つの手法が主流となっています。
この中でウェスタンブロッティングでよく用いられているのはSDS-PAGEです。最近は二次元電気泳動で分離したゲルをもとにしたウェスタンブロッティングも多くなってきています。このハンドブックではSDS-PAGE を中心にご紹介していきます。 SDS-PAGESDS(Sodium Dodecyl Sulphate)- ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)は、目的タンパク質の高次構造を変性して分子量の違いにより分離する手法です。ポリアクリルアミドゲルは、ゲル中の細孔径が密なため100 ~ 200 kDa 以下のタンパク質やポリペプチドを分離するのに適しています(図1)。操作が簡便で再現性が高いので、タンパク質の電気泳動では最もよく用いられている手法です。通常は、泳動サンプルの調製時にβ - メルカプトエタノールやDTT(Dithiothreitol)などの還元剤を添加してタンパク質のS-S 結合(ジスルフフィド結合)を切断します。SDS は、水溶性タンパク質1 g あたり約1.4 g 結合してSDS-タンパク質複合体を形成します。SDS の結合量によって分子の電荷がほぼ決まるため、電気泳動によりポリペプチド分子を分子量にしたがって分離することができます。(図2) にIgG をSDSとDTT(還元剤)を含むサンプルバッファーに溶解し、100 ℃で処理した例を示します。還元剤によりジスルフィド結合が切断され、IgG はH 鎖とL 鎖に分かれます。さらにSDS が吸着し全体が負に帯電することで、立体構造がなくなり、タンパク質は一本鎖となります。SDS 処理により、タンパク質固有の立体構造や表面電荷違いによる影響を受けることなく、分子量での分離が可能になります。電気泳動により、分子量の小さなタンパク質は速く、大きなタンパク質は遅れて陽極方向に移動します。 SDS-PAGE における目的タンパク質の分離能はタンパク質の大きさとゲルの多孔度に依存します。そのため、最適なゲル条件を見つけるために条件検討が必要となります。 SDS-PAGEに必要なものウェスタンブロッティングでの注意点
ポリアクリルアミドゲル濃度の選択分離できる分子量分画範囲はポリアクリルアミドゲルの濃度によって決まります(表1)。精度の高い解析を行うには、目的タンパク質のバンドがゲル中央付近に位置するようにゲル濃度を選択します。ゲルには濃度勾配を持つグラジエントゲルとゲル濃度が均一なホモジニアスゲルがあります。サンプルのおおよその分子量分布を調べる場合、もしくは、サンプルのタンパク質の分子量が広範囲にわたる場合は、グラジエントゲルを用います。サンプルの分子量をできるだけ正確に調べたい場合、あるいは分子量の近いタンパク質を分離したい場合には、濃度が均一なホモジニアスゲルを用います(図3) 。グラジエントゲルとホモジニアスゲルを組み合せることでシステマチックにサンプルの分子量分布を解析できます。 表1.タンパク質分画に必要なポリアクリルアミドゲル濃度
*分子量の大きなタンパク質はゲルに入りにくい場合があります。 図3.標準タンパク質の移動度とポリアクリルアミド濃度の関係 ポリアクリルアミドゲルの組成はアクリルアミドの割合(% T)とクロスリンクの割合(% C)の2 つの指標で示されます。クロスリンクの割合は通常2.6%です。% T が高くなるとポアサイズが小さくなるのでタンパク質がゲル内で移動しにくくなります。 もっとも一般的なウェスタンブロッティングでは2 種類のゲルを用います。濃縮ゲルと分離ゲルです。濃縮ゲルはホモジニアスなゲルで大きめのポアサイズ(% T=4 ~ 5%)で作製します。これは分離ゲルに入る前にタンパク質を濃縮する役割を果たし、ゲルの中でのバンドの分離能を高めます。一方で分離ゲルはより固いゲルにします。ホモジニアスやグラジエントゲルどちらでも% T は5 ~ 20%の幅で設定します。 分子量の測定法サンプルと同一ゲルに分子量マーカーを泳動することで、サンプル中のタンパク質の分子量を推定することができます。正確な分子量測定には色素が結合していないマーカーを用います。(図4)は分子量既知のタンパク質分子量マーカーをSDS-PAGE した結果です。泳動開始位置から先行色素(ブロモフェノールブルー)の距離をRf=1.00 としたときのそれぞれのタンパク質の相対的移動度(表2)を求めます。(表2)で得られた相対的移動度を横軸、分子量の対数を縦軸にとりグラフにプロットして検量線を引きます(図5) 。未知のサンプルの移動度とこの検量線から未知サンプルの分子量を推定します。 図4.SDS-PAGE のパターン 表2.SDS-PAGE(図4)における各タンパク質の分子量と相対的移動度
*分子量の大きなタンパク質はゲルに入りにくい場合があります。 図5.SDS-PAGE による検量曲線 電気泳動装置の選び方スクリーニング目的には、泳動距離の短いミニゲル用泳動装置、分離を高め大きく展開するには、泳動距離が長く大きなゲルが泳動できる装置を選択します。さらに、ゲル作製の手間がなく再現性に優れた結果を得るにはプレキャストゲルの使用が有効です。発熱によるバンドの歪みを抑えるために、ゲル全面を冷却できる電気泳動装置を用います。
※そのほかにも、品質試験などで大量にゲルを扱う方におすすめなプレキャストゲルを用いた全自動電気泳動装置PhastSystem™もご用意しております。 ゲル・バッファーの作製、調整方法ゲルの作製方法準備
手順
表3.ゲル溶液
総溶液量はゲルの枚数、ゲル厚に応じて調節します。 表4.モノマーストック溶液量(X)一覧
サンプルバッファーの調製方法サンプル中の塩濃度をなるべく下げ、かつサンプル間の塩濃度差を小さくした後、サンプルバッファーでタンパク質の変性を完全に行います。不完全な変性はアーチファクトの原因になります。通常はサンプルと1. の2 ×サンプルバッファーとを等量混合して使用します。サンプル濃度が低い場合は2. の6 ×サンプルバッファーとを混合して使用します。どちらも泳動前に95℃で3 ~ 4 分間ボイルします。
泳動バッファーの調製方法
タンパク質分子量マーカーの選び方と使い方タンパク質分子量マーカーの選び方ウェスタンブロッティングに対応した分子量マーカーをご用意しています。下図より目的にあわせたマーカーをお選びください。分子量範囲や検出方法は(表5)よりご覧いただけます。 表5.ウェスタンブロッティング用分子量マーカー 一覧
ECL Plex™ Fluorescent Rainbow Markers の使い方蛍光検出可能なマーカーであり、蛍光ウェスタンブロッティング時に利用可能です。レインボータイプの着色マーカーの機能も持ち、可視でも確認が可能です(図6) 。
図6.ECL Plex™ マーカー分離パターン 手順
ECL DualVue™ Western Blotting Markers の使い方電気泳動・ブロッティング状態の目視確認用の3 種類の着色済みタンパク質と、化学発光検出が可能な分子量測定用の7種類のS-tagged 組換えタンパク質がプレミックスされた分子量マーカーです。(図7)抗体反応液に、キット付属のS-Protein-HRP を添加して、マーカーを目的サンプルと同時にECL 化学発光検出することができ、より正確に分子量測定が行えます。
手順
表6.S-Protein HRP conjugate の希釈条件(X 線フィルムによる検出)
CCD イメージャーで検出する場合は、感度にあわせてS-Protein HRP conjugate の希釈濃度を検討します。X 線フィルムの場合の10 倍濃度を目安に検討してください。 図7.ECL DualVue™ Western Blotting Markers の分離パターン Rainbow™ Molecular Weight Markers の使い方各バンドが異なる色素で着色されている分子量マーカーです。電気泳動経過や、ブロッティ ング時のトランスファー効率を視覚的に確認できます(図8) 。 Rainbow™ Molecular Weight Markers は、マーカータンパク質に色素が吸着しているため、正確な分子量測定には向きません。分子量の目安としてご使用ください。 図8.Rainbow™ Molecular Weight Markers の電気泳動図 手順
SE 260 での電気泳動方法標準的な電気泳動装置の手順をご紹介します。 ゲルサンドイッチの準備
泳動槽の準備
サンプル準備
表7.添加するサンプル量
泳動
泳動終了
ゲル染色試薬の選び方電気泳動でタンパク質がうまく分離されていることやブロッティング後にタンパク質のブロッティング効率を確認するためにゲルを染色してバンドを可視化することができます。一般的にはCBB 染色が用いられます。CBB とDeep Purple はメンブレンを染めることもできます。お持ちの装置やサンプル量から手法をお選びください(下フロー図)。また、各手法の仕様を表8 に示しました。 表8.染色試薬の仕様
関連記事ウェスタンブロッティングとは? ウェスタンブロッティングは、電気泳動の優れた分離能と抗原抗体反応の高い特異性を組み合せて、タンパク質混合物 から特定のタンパク質を検出する手法です。タンパク質の存在を検出するだけでなくタンパク質の状態確認(リン酸化などの修飾)もできます。リン酸化を介したシグナル伝達機構の解析や狂牛病の二次検査での異常型プリオンの検出などライフサイエンスの様々な分野で、目的タンパク質の検出や解析に利用されています。 ブロッティングとは? 電気泳動後のゲルからメンブレンにタンパク質を転写(ブロッティング)する方法をご紹介します。 抗体反応とは? ブロッティング後のブロッキングおよび一次・二次抗体を用いた反応についてご説明します。メンブレンから抗体を除去して別の抗体を使って検出する方法(リプロービング・抗体除去)もご紹介します。 検出とは? メンブレン上のタンパク質が発するシグナルをフィルムや検出システムを使って可視化する作業をご説明します。 関連製品Amersham™ QuickStain Cy5とラベリングバッファーのキットで、SDS-PAGEのバンドの蛍光検出やウェスタンブロッティングのメンブレン上で抗体検出バンドとトータルプロテインの蛍光検出を同時に行うことによりノーマライズすることがが可能となります。 DNA電気泳動のゲル濃度は?アガロースゲル電気泳動を行う際に使用されるアガロースの濃度は通常1.0%です。 アガロース濃度が高くなると、小さいバンドの分離能が向上します。 逆にアガロース濃度が低くなると、バンドがより鮮明になり、大きい分子量のバンドの分離能が向上します。
タンパク質のゲル濃度は?均一ゲルのゲル濃度は通常7.5%から15%程度で用いられ、グラジエントゲルは4から20%の範囲で用いられます。 タンパク質の移動度を示したチャートや表を利用することで、目的サンプルの最適な分離能が得られるゲルタイプを選択することができます。
ポリアクリルアミドゲルの利点は?ポリアクリルアミドゲルは、ゲル中の細孔径が密なため100~200 KDa以下のタンパク質やポリペプチドを分離するのに適しています。 操作が簡便で再現性が高いので、タンパク質の電気泳動では最もよく用いられている手法です。
SDSSDS-PAGEの場合は、イオン夾雑物(塩)濃度がサンプルの移動度や泳動パターンに影響を与えることがあるため、塩濃度をなるべく下げます。 一般的に、サンプルの塩濃度は0.5M以下を推奨しています。
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